研究概要 |
1.酸素及び糖欠乏液負荷による海馬錐体細胞の非可逆性障害発生機序と非可逆性障害発生防止法 酸素・糖欠乏Krebs液で脳スライス標本を灌流すると、ラット海馬錐体細胞は一旦過分極した後、急峻な脱分極に転じ、約6分後には膜電位が消失して細胞死をおこした。この脱分極電位は主にATP減少による細胞内Ca汲み出し機構の障害と脱分極による細胞外からのCa流入増大に起因することが示唆された。低温環境(27〜28°C)、ATPの細胞内注入、procaine(0.3〜1mM)による標本前処置は脱分極の発生を防止した。また、有機Ca拮抗薬(flumarigine 1〜10μM)細胞内Ca誘起性Ca遊離拮抗薬(ryanodine 20μM)、NMDA受容体遮断薬(APV0.25mM)、脳保護薬(pentobarbotal0.1mM,bydrocortisome 1μM)は脱分極電位発生潜時を延長させ、かつ、脱分極発生時に酸素・糖会有Krebe液で標本を再灌流すると、膜電位はコントロ-ルのそれに回復した。以上の結果は上述の脱分極発生機序を関節的に支持した。 2.高カリウム(K)液負荷による海馬錐体細胞の非可逆性障害発生機序 正常Krebs液のK濃度を60〜75mMに上昇させて脳スライス標本を灌流すると、モルモット海馬錐体細胞は0mV附近まで脱分極して細胞死を来たした。標本を無機Ca拮抗薬(Co2mM,Cd0.5mM)あるいは有機Ca拮抗薬(nerapamil 3μM,D6001μM,flunarigine 1μM,cinnarigine 1μM,mifedipine 1μM,micardipine 4μM,prenylamine 3μM)で前処置すると、海馬錐体細胞の細胞死を阻止し得た。この細胞死阻止効果は海馬錐体細胞の尖端樹状突起上に局在するL型Caチャネル活性化によるCaスパイクの抑制度とよく一致することから、尖端樹上突起でのCa流入が高K溶液負荷による細胞死の原因であることが判明した。
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