研究概要 |
1.レーザ局所加温(1)脳幹の局所加温:24.5mWのアルゴン・レーザ照射で、ウサギ脳組織の温度上昇は2℃で、この照射量で生理的温度刺激が可能であると考えられる。上昇温度の等温分布は、照射方向に長い半楕円体と半球の合成形に近似された。これらの結果がレーザ照射量が10〜24.5mWの範囲で3次元温度分布のシュミレーションが可能となった。(2)脊髄のレーザ局所加温:脊髄加温の場合は、形状および生理学的機構上、脊髄の軸に沿った加温範囲を得る必要がある。現在、脊髄硬膜上に留置した赤色チューブ内に挿入した、グラスファイバー先端の位置設定により、容易に脊髄の各レベルの選択的加温が可能となった。 2.アルゴン・レーザ照射の影響(1)ウサギ脳組織の細胞変性:レーザ照射(45、70、100、130mW)したウサギ脳組織切片から、照射量100mW、130mWで凝固壊死、熱性浮腫が観察された。しかし、70mW以下では、これ等の細胞変性は認められなかった。(2)熱放散の機能障害:視束前野・前視床下部(PO/AH)を繰り返し局所加温した結果から、45mW以下では、熱放散機能の障害は認められなかった。(3)麻酔効果:PO/AHレーザ加温で誘発された熱放散反応は、ネンブタール麻酔(10mg/kg i.v.,30mg/kg/hr i.v.)で抑制された。 3.延髄網様体(MRF)およびPO/AHを、熱放散反応(△Tea:耳介皮膚温上昇、△RR呼吸数増加)が誘発される最小照射量で局所加温した時の反応量について比較した。熱放散反応を誘発するレーザの最小照射量は、14.5mW(PO/AH)、19.0mW(MRF)で有意の差であった。しかし、△Tea△RRおよび直腸温、脳温の下降について、両者の部位で有意の差は認められなかった。各最少照射量での加温温度、加温範囲の差は、主にPO/AH、MRFにおける温受容細胞の密度に困るものであろう。現在、脊髄加温による熱放散反応について比較検討中である。
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