熱放散反応発現における各中枢温度感受性組織の貢献度の定量的比較

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570082
• 研究機関: 長崎大学
• 研究代表者: 大渡 伸 長崎大学, 熱帯医学研究所・疫学部, 助手 (80128165)
• キーワード: 体温調節 / 熱放散反応 / レ-ザ局所加温 / 脊髄 / アルゴン・レ-ザ / 耳介皮膚血管拡張 / 浅速呼吸 / ウサギ

研究概要

本年度の研究は、アルゴン・レ-ザを用い脊髄の胸髄から腰髄までの範囲(Th1〜L4)を局所加温し、誘発された熱放散反応の解析を行なった。先ず、脊髄の局所加温法の確率と、加温時の温度調節を行なった。脊髄加温法:実験前2日目にウサギの脊髄硬膜上腔へ、直径0.8mmの赤色チュ-ブ(グラスファイバ-のガイド用チュ-ブ)をL4/5からThlまで挿入した。脊髄加温は、このチュ-ブ内にレ-ザ光を導くグラスファイバ-(直径0.4mm)を挿入してレ-ザ照射を行ない、チュ-ブに接している脊髄の一部を局所加温する方法を用いた。脊髄加温温度:加温温度はレ-ザの照射量に依存した。脊髄表面の最高上昇温度および0.5℃以上温度上昇した脊髄の長さは、40mWで1.32℃、7.3mm、60mWで2.02℃、10.5mm、80mWで2.73℃、13.1mm、100mWで3.28℃、15.2mmの結果が得られた。この加温法では、チュ-ブ内でファイバ-先端を移動させる事により、脊髄の任意の場所を、選択的に加温する事が可能である。また、ファイバ-移動による脊髄損傷が避けられる。
レ-ザ照射量を40、60、80、100mWで照射時間は15分の4段階とし、脊髄をL4からThlまでの範囲で、加温場所を1cm毎に変えて繰り返し局所加温した。耳介皮膚血管拡張による耳介皮膚温の上昇、および呼吸数増加の熱放散反応が誘発され、これら反応により直腸温が下降した実験結果について解析した。(1)レ-ザ照射による局所加温により、L4からThlまで全範囲で、熱放散反応が誘発され直腸温が下降した。(2)しかし、加温した脊髄の場所により反応量は異なった。(3)反応量が微弱な場所でも、照射量の増加により充分な反応が観察された。(4)胸髄と腰髄に分け比較すると、熱放散の反応量に差は認められなかった。

研究成果

• [文献書誌] Yang,G.J.et al.: "Poor heat loss ability of Pika(Wistle rabbit)" Trop.Med.30(1). 45-48 (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.et al: "Changes in Hypothalamic blood flow due to thermal acclimation" Trop.Med.30(2). 163-174 (1988)
• [文献書誌] Kosaka,M.et al.: "Analysis of locomotor activity on Pika(Whistle rabbit)" Trop.Med.30(3). 213-218 (1988)
• [文献書誌] Ohwatari,N.et al.: "Heat loss response induced by local heating of spinal cord with Argon Laser" Trop.Med.31(3). 147-150 (1989)
• [文献書誌] Ohwatari,N.et al.: "Effect of general anesthesia on heat loss responses during hyperthermic treatment" Hyperthermic Oncology. 321-323 (1989)
• [文献書誌] Kosaka,M.et al.: "Cerebral blood flow change due to thermal acclimation" Thermal Physiology. 463-468 (1989)
• [文献書誌] Kosaka,M,et al.: "Changes in hypothalamic blooed flow due to pyrogen-induced fever.In,Current Research in Hyperthermia Oncology" Academic Press Inc.,Ed.by E.Kano, 1-920 (1988)
• [文献書誌] Ohwatari,N.et al.: "Analysis of heat loss responses induced by local heating of hermally sensitive tissues in the CNS of rabbitswith an argon laser." EXCERPTA MEDICA,Amsterdam-New York-Oxford Ed.by James B.Mercer, 1-822 (1989)