体重350ー450グラムのウイスター系ラットをウレタンの腹腔内投与(1.2ー1.5グラム/体重kg)により麻酔し、実験に先行して両側視索前野・前視床下部領域を電気的に破壊した56匹について実験を行なった。縫線核は、強さ50ー200μA、期間50ー200μs、頻度50ー200Hzの単極定電流刺激を2ー10秒間加え、そのγ運動ニューロン活動への効果は次の二つの方法により調べた。 (1)腰仙部脊髄前根を細分し固定した43本の単一γ神経神維の自発放電活動に対する縫線核刺激効果は86%に認られ、その反応様式により(1)抑制型(25例)、(2)促進ー抑制型(5例)、(3)促進型(7例)に分類された。約80%((1)と(2))は抑制的反応であり、その中50%に刺激後30分以続く完全な発火活動の停止がみられた。この縫線核刺激によるγ運動ニューロン活動の抑制反応はセロトニン拮抗剤のpークロロフェニルアラニンにより拮抗され(3動物)、上記γ運動ニューロン活動の抑制・促進反応は縫線核からのセロトニン作動性下行路を介することが示唆された。 (2)筋紡錘求心性神経終末の筋伸張応答を解析する実験は、下腿三頭筋(19第一種終末、15第二種終末)及び前脛骨筋(17第一種終末、2第二種終末)について調べた。縫線核刺験の第一種終末に対する効果は下腿三頭筋では100%促進、前脛骨筋では76%抑制)と明らかな相反的な結果が得られたのに対し、第二種終末については明瞭な結果は得られず今後の課題となったが、これらの促進・抑制はいずれも動的γ運動ニューロン活動の変化と判定された。従って、この結果は、縫線核はその脊髄下行路を介して伸筋γ運動ニューロンを促進、屈筋γ運動ニューロンを抑制する相反的影響を及ぼすことを示唆するものと考えられる。
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