私たちは、先に、ウサギ虹彩括約筋の経壁電気刺激による、非コリン性、非アドレナリン性反応は、substancePまたはneurokininA、あるいは両者によって引きおこされる可能性を支持する結果を得た。本研究の目的は、これらを直接的に決定するため、シナプシス後膜側に存在する受容体の性質を、結合実験により調べると、substancePやneurokininAによるウサギ虹彩括約筋の収縮には、タキキニン受容体を介するイノシトールリン脂質代謝回転が関与するかどうかを検討すること、および同標本を経壁電気刺激し、遊離してくる内因性タキキニンが何であるのかを、化学的に同定することである。その結果、 1)^3H-substanceP結合実験により、ウサギ虹彩括約筋には、タキキニン受容体が存在することを認めた。しかし、^3H-substanceP結合に対するタキキニン(substanceP、kassinin、neurokininA、neurokininB、physalaemin、eledoisin)の阻害実験により、ウサギ虹彩括約筋のタキキニン受容体は、NK1型、NK2型、NK3型のいずれにも属さない可能性が示唆されたが、この事を決定するためには、更に実験が必要であると思われる。 2)タキキニン刺激により、ウサギ虹彩括約筋には、タキキニン受容体を介するイノシトールリン脂質代謝回転を認め、しかも外液のCa^<2+>が存在しない状態でも、この代謝回転が行われることを認めた。 3)ウサギ虹彩括約筋を電気刺激し、表面潅流法により遊離してきた潅流液を採取し、凍結乾燥濃縮し、高速液体クロマトグラフにて、substanceP分画と、neurokininA分画に分離した。現在、radioimmunoassayの準備をしており、もう少しで、電気刺激によって遊離してきたタキキニンを、同定、定量できると思われる。
|