我々は前年度の科研費補助による研究により、心筋のアドレナリン性β_1-およびα_1-受容体の解析にラジオリガンドして^3H-CGP12177および^3H-prazosinが使用できることを明らかにした。この実験から、α_1-受容体の方がβ_1-受容体よりもKd値(0.20vs 0.40nM)は親和性が高く、またBmaxも高い値を示した(44.9vs fomles/protein)。そこで今年度はこれら両者の受容体におよぼすpolymeric effector(ポリミキシンB、ヘパリン、DNAなど)の影響についてScatchard分析を用いて検討を行った。なお、これらpolymeric effectorの濃度は200μg/mlの割合で添加した。 [結果]polymeric effectorの影響について検討をおこなったところ以下の結果を得た。(1)polymixinの影響:α_1-受容体についてはKd値およびBmaxともに変化を与えなかったが、β-受容体はcontrol値0.40nMが0.84nMに上昇し親和性の低下が認められた。しかし、Bmax値は変化しなかった。(2)ヘパリンの影響:α_1-受容体に関してはKdおよびBmaxともに何から影響を与えなかったが、β-受容体のBmaxは有意に上昇した。しかしKd値は変化しなかった。(3)DNAの影響:α_1およびβ-受容体ともにKdおよびBmax値ともに何ら影響を与えなかった。 [結論]polymeric effectorをin vitroで添加することにより、α_1-受容体は影響を受けなかったがβ-受容体はポリミキシンBあるいはヘパリンの添加によりKd値およびBmax値が上昇した。このことは心筋に存在する両者の局在性あるいは受容体近傍の環境などに差があることが解った。また、これらの結果から両受容体に作用する薬物の構造も違いも両受容体の性状の相違に起因している可能性がある。
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