研究概要 |
強心物質が心筋の収縮力を増大する機序は心筋細胞のion fluxから、細胞内Na^+活性(aNa_i)の増加に第一義的に依存するものと、細胞質内のCa^<2+>増加を直接起こすものとに分類できる。(薬理研連シンポ1987年)。強心配糖体の収縮力増大とaNa_iの増加との関連については、静止時のモルモット乳頭筋にて確認できた。しかし、活動筋でのaNa_iの測定をNa^+感受性微小電極(ETH227)で行うことは技術的に極めて困難であることがわかった。そこで、摘出心房筋にて^<23>Na-NMRを利用し、シフト試薬にDy(TTHA)^<3->を用いて、そのNMRシグナルから細胞内外のNaを直接測定した。強心配糖体と静止時のNa_+流入を増すasebotoxin-III(ATX-III)の併用で細胞内Na(Na_i)はコントロールに対し130%の増加を示し、5mM Ca_oでNa-Ca交換を促進すると90%にまで減少した(Jap,J,Pharm,46,220,P 1988)。一方、細胞内CaをFura-2-AMを用いて、その蛍光差340/380(nm)の比(R340/380)で測定する方法を確立し、同時に収縮力と一部膜活動電位も測定した。この結果、Ca_oの増大、低温、Na_o、K_oの減少は拡張期のCa_iを増大することが明らかにされた(Jap ,J,Pharm,49、P-245,1989,京都)。また、単収縮曲線とFura-2-Caシグナルとの対比により、強心配糖体とβ-刺激剤(isoproterenol)の作用に明らかな差を認めた。即ち、後者はCa^<2+>の流入スピードも流出スピードも速く、弛緩時に速やかに細胞質から減少するのに対し、強心配糖体は、流入Ca量の振幅は単収縮時に大きくならないが、静止時〜拡張期のCa_iシグナルのレベルを増大した(同P-246,1989,京都)。以上の如く、現在、Na^+-ISME,Fura-2 340/380比、^<23>Na-NMRを用いて、強心剤とATX-III、β-刺激剤の作用をより詳細に明らかにしつつある。
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