研究概要 |
我々は、肝可溶性画分に,アデニレ-トシクラ-ゼのβーアドレナリン性応答を促進する因子を見いだし,その構造および作用機序について検討している。この因子は分子量3,000のペプチドとGTPの複合体であり,高塩濃度下で二成分に解離する。解離したGTP結合性ペプチドを精製し,これを用いてその作用機序の解析を行ったところ,本ペプチドが,ホルモンによるアデニレ-トシクラ-ゼの活性化およびホルモンー受容体・親和性曲線に対するGTPの効果を増幅することが確認された。この増幅機能はβーアドレナリン性応答に選択的に観察された。以上の結果に基づき更に機能的・構造的解析を加えた。 1.機能的解析:本ペプチドの四種ヌクレオチド三リン酸およびGDPに対する親和性を[ ^<35>S]STP_γSを用いたフィルタ-測定法により比較したところ,GTP》ATP>UTPの順に親和性が高く,CTPとGDPには全く結合しなかった。この結果は,本ペプチドが他のG蛋白質とは異なる様式によりGTPと結合することを示唆する。本ペプチドのGTP効果増幅作用は,G_s蛋白質上でのGDPーGTP交換反応の促進による可能性が強い。この点を明らかにするためG_sからのGDPの放出に対する本ペプチドの影響を明らかにしたい。 2.構造的解析:マストパラン(14個のアミノ酸からなるペプチド)はG_iへのGTPの結合を高めることで知られているが,その機序としてその構造が受容体のG_iに作用する部位の構造と類似しているためと考えられている。従って,本ペプチドの一次構造の解明は重要と考えられる。本ペプチドをトリプシンおよびエンドプロティナ-ゼ処理後,得られたフラグメントのアミノ酸配列の決定を行い,構造の一部が明らかとなったが更に検討中である。
|