副腎髄質からのカテコールアミン(CA)分泌は、Caイオンに依存したexocytosisによりおこる。CA含有顆粒と細胞膜の融合がその基本となっているが、その分子機序とCa作用については不明である。本研究では、培養ウシ副腎髄質細胞を用いてCa作用発現機序を想定し、分離した顆粒の系においてそれを再現しようと試みた。(1)digitonin(20μM、5分間)処理によりpermeabilizeさせた細胞において微量(μMオーダー)のCaは、ATPーMgに依存したCA分泌をおこした。しかし、digitonin処理後10分間放置した後では、CaによるCA分泌は認められなかった。このことは、digitonin処理細胞にはCA分泌に必要な要素が全て保持されているが、そのあるものは比較速かに細胞外に漏出することを示すものである。(2)漏出性の要素は細胞質由来と考えられること、また顆粒と親和性をもつタンパクであると想定されるので、顆粒膜を固定したアフイニイテイカラムを作成し、Caの存在下にのみ顆粒と結合するタンパクを分離した。しかしこのタンパクは、顆粒からのCA遊離をおこさなかった。従って細胞構成々分を再構成するだけでは十分ではなく、空間的な再構成をおこなうことが重要であることがうかがわれた。(3)近年、CーkinaseがCaに依存した諸々の細胞機能の発現に関与することが知られるようになった。我々はdigitonin処理副腎髄質細胞において、アラキドン酸がCaとATPーMgに依存したCA分泌を促進すること、アラキドン酸は細胞質分画のCーkinaseを活性化することを認めた。このアラキドン酸の作用は、cis型不飽和脂肪酸に共通のものであることを明らかにした。現在、漏出因子とCーkinaseの関係、Cーkinaseの内因性基質について検索している。
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