研究概要 |
ステロイドホルモンの作用機構を解明するため、我々がすでに単離したラットエストロゲン受容体cDNDを利用して、1 エストロゲン受容体の機能的ドメイン構造の解析、特にNー端側の機能の解析、2 ステロイド関連遺伝子、特にエストロゲンの標的遺伝子のクロ-ニング、3 エストロゲン受容体の大量生産、の3つの目的で本研究を開始し、いくつかの成果をあげることが出来た。 1.ラットエストロゲン受容体のcDNAをNー端側およびCー端側から順次欠失した変異受容体を作製し、エストロゲン作用部位を持つ標的遺伝子と共にCOSー7細胞に導入した。エストロゲンに依存した転写活性を測定し、欠失変異を持つ受容体の転写促進活性を調べた。その結果、Nー端より185ー267番目のアミノ酸のDNA結合領域および、307ー557のステロイド結合領域以外に二つの転写を活性化する領域が明らかになった。一つは、316ー341の領域で他のいくつかの転写因子にみられるように酸性アミノ酸に富んだ領域である。もう一つの領域はNー端に近い59ー140の疎水的な領域で、すでに報告されている転写因子、CTF,OCTー2,OCTー3などの活性化領域と似た性質を持っている。この領域の欠失の影響は、標的遺伝子によって異なり、エストロゲン受容体のNー端側には標的遺伝子の違いを認識し、それぞれの標的遺伝子にふさわしい転写活性化をする働きがあることが示唆された。 2.エストロゲン受容体の標的遺伝子に対する特異的な結合を利用してエストロゲン標的遺伝子の単離を試みている。エストロゲンcDNAのDNA結合領域部分を大腸菌で大量に発現させ精製した。この蛋白質と約1ー2kbに切断した遺伝子DNAを混合し特異的に結合したDNAのみをフィルタ-に吸着させた。得られたDNAをクロ-ンして塩基配列を調べた結果、エストロゲン作用配列を含んでおり標的遺伝子である可能性が強い。これらをプロ-ブとして、遺伝子ライブラリ-やcDNAライブラリ-をスクリ-ンし標的遺伝子がクロ-ン出来るものと思われる。 3.大腸菌での大量発現は、2 で述べたように成功し利用しているが、もう一つ試みたカイコを使う系では思ったほど大量に発現せず改良の余地が残されている。
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