研究概要 |
1.我々はすでにDーアミノ酸オキシダーゼの組織化学的検出法としてニッケルイオンを用いる鋭敏な共役過酸化法を開発しているが(Acta Histochem.Cytochem.18,539ー550,1985)、本法によってラット全脳での本酵素の神経解剖学的分布を連続固定切片を用いて調べた。終脳には全く分布せず、間脳にもほとんど活性はなく、下位脳幹(中脳・橋・延髄)・小脳・脊髄のみに限局していた。活性を示す細胞はグリア細胞(星状膠細胞とベルクマン膠細胞)のみで、ニューロン・内皮細胞・上衣細胞は全く活性を示さなかった。中脳ではほとんど被蓋のみに活性を認め、特に赤核を囲む網様体が濃密に活性染色された。橋・延髄においても網様体、特にその内側部に強い活性がみられた。脊髄(頸髄)では灰白質全体が活性を示し、小脳では皮質の方が髄質よりも強く活性染色された。 2.上記の組織化学的方法を用いて、ラットの腎臟・肝臓・脳におけるチアゾリジンー2ーカルボン酸オキシダーゼ活性の分布を調べた。各組織において本活性はDーアミノ酸オキシダーゼ活性の分布と一致していた。 3.システアミンなど各種SH化合物の代謝調節作用や薬理作用を、血管平滑筋(主としてイヌの冠状動脈)を用いて調べた。システアミンやシステインは強い収縮作用を示し、グルタチオンやシスタミン(酸化型システアミン)は拡張作用を示した。各種阻害剤の効果から、これらSH化合物がCaイオンの動態に関与することを明らかにした。シスチンや酸化型グルタチオンに関しては目下検討中である。 4.グリオキシル酸を生成する酵素である短鎖Lーヒドロキシ酸オキシダーゼ(A型=グリコール酸オキシダーゼ)の化学修飾の研究から、活性発現にとって必須なアルギニン残基の存在を明らかにした。 5.生体アミンのうちシステアミン以外にヒスタミンにも着目し、その分解酵素であるジアミンオキシダーゼの阻害機構を明らかにした。
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