ヒト血小板においてアラキドン酸は、シクロオキシゲナーゼおよび12-リポキシゲナーゼによって代謝され、前者の酵素反応産物のトロンボキサンA_2は循環器系の機能調節に重要な役割を果たしている。シクロオキシゲナーゼは血小板のミクロソーム画分に、12-リポキシゲナーゼは可溶性画分に局在しており、それぞれの酵素を部分精製した。この部分精製酵素標品を抗原としてマウスを感作し、その脾臓細胞とミエローマ細胞をポリエチレングリコールで融合させた。得られた融合細胞の培養上清をスクリーニングし、それぞれの抗体産生細胞をクローニングした。モノクローン抗体を大量に調製するために、抗体産生細胞をマウス腹腔内で増殖させ、腹水中から抗体をIgG画分にまで精製した。シクロオキシゲナーゼ蛋白の異なる部位に結合する二種類の抗体を用いて、サンドイッチ方式による酵素免疫測定法を開発した。すなわち、一方の抗体をペプシンで消化して得られたFab'と西洋ワサビペルオキシダーゼを結合させた。このペルオキシダーゼ標識Fab'とシクロオキシゲナーゼとを反応させ、もう一方の抗体をプロティンA(黄色ブドウ球菌)に結合したもので沈殿させた。沈殿中のペルオキシダーゼの活性を、過酸化水素と0__ー-フェニレンジアミンを基質として調べると、シクロオキシゲナーゼ量との間に直接性の相関関係が得られ、この方法で組織中のシクロオキシゲナーゼの含量の定量することができることが分かった。同様の酵素免疫測定法を12-リポキシゲナーゼについても確立した。このように、血小板のシクロオキシゲナーゼおよび12-リポキシゲナーゼに対するモノクローン抗体を利用して高感度の酵素免疫測定法を開発した。今後この方法を応用して、循環系の病態における酵素の動態を追究してゆく予定である。
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