ヒト血小板の脂肪酸シクロオキシゲナ-ゼおよび12-リポキシゲナ-ゼに対するモノクロ-ン抗体を調製し、これを用いて各々の酵素免疫測定法を開発した。このサンドイッチ法による酵素免疫測定法は、これまでの^<14>C標識アラキドン酸を用いて酵素活性を測定する方法に比べて10倍以上も感度が高く、血小板における酵素の動態を追究できる。 これまで臨床的に血小板のシクロオキシゲナ-ゼ欠損症と思われる症例が報告されており、この患者血小板の酵素を今回開発した免疫測定法で解析した。血小板凝集作用をもつトロンボキサン(TX)A_2の生成には、シクロオキシゲナ-ゼ(アラキドン酸→PGH_2)およびTXA合成酵素(PGH_2→TXA_2)が関与している。種々の酵素学的検討を行なった結果、この患者の血小板においては、TXA合成酵素は正常であるが、シクロオキシゲナ-ゼ活性が著明に低下していることが分った。シクロオキシゲナ-ゼは血小板のミクロソ-ムに局在しており、この酵素を非イオン性界面活性剤で可溶化して酵素免疫測定法を行なった結果、この患者においては正常人とほとんど同じレベルのシクロオキシゲナ-ゼ蛋白が検出された。従って、患者血小板においては、免疫学的には正常のものと区別できないが、酵素活性の著明に低下しているシクロオキシゲナ-ゼ蛋白が存在しているものと考えられる。 アラキドン酸12-リポキシゲナ-ゼについても、同様の酵素免疫測定法を確立し、21才から54才までの健常男女22血小板における酵素含量を測定した。血小板の12-リポキシゲナ-ゼ含量には年令差はほとんど認められなかった。また、男性よりも女性の方が酵素含量が多い傾向があったが、統計学的な有意差は認められなかった。 本研究で開発した酵素免疫測定法は、血小板の機能とその病態を理解してゆく過程において、今後有用な研究手段になるものと期待される。
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