ピリオドキサ-ル酵素は補酵素としてピリドキサ-ル燐酸(PLP)を要求し、アミノ酸を基質としてラセミ化、アミノ基転移、脱酸など生体内での重要な反応に広く関与している。これらの酵素群のなかでアスパラギン酸アミノ基転移酵素(AspAT)は活性域の構造と機能について最も良く研究されている。本研究は核磁気共鳴(NMT)法により本酵素の触媒機能の鍵を握る酵素・PLPシッフ塩基及び基質・PLPシッフ塩基の活性域におけるミクロ環境を明らかにすることを目的としている。ブタ心筋より単離した細胞質局在AspATをアポ化し、補酵素の4´位を^<13>Cでエンリッチした〔4´-^<13>C〕PLPにより再構成した。この試料を用いて^<13>CNMR測定実験を行い、〔4´-^<13>C〕に由来するシグナルを163ppm(pH6)に観察し、本研究の推進にNMR法の適用が可能であることを確認し、以下の結果を得た。(1)基質が存在しない状態でpH滴定実験を行い、pKは6.3と算出され、^1HNMRで得られない情報を得た。(2)本酵素の競争阻害剤であるコハク酸の影響を知るために飽和濃度でのコハク酸の添加実験を行い、pH7.5で補酵素の4´Cはおよそ4ppm低磁場シフトするのを観察した。その滴定曲線はpK7.7を与え、その値は分光学的に得られた結果に近いことを示した。(3)本酵素はシステインスルフィン酸(CS)との反応によってピリドキサ-ル型からピリドキサミン型に変わる。pH5.15でCSを加えると165ppmの4´Cのシグナルは消失しaliphatic領域の40ppmに新しいシグナルを現した。また、4´C線幅は125±10Hzから75±10Hzに変化し、運動の自由度の増加を示した。(4)本酵素は基質類似体である2-メチルアスパラギン酸(2-MeAsp)と反応して安全なexternal aldimine複合体を形成する。飽和濃度の2-MeAsp存在下で4´CのシグナルはpH5-9で化学シフト変化を示さない興味深い結果を得た。
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