研究概要 |
ヒト赤血球膜に依存する新しい膜酵素である酸化型グルタチオン(GSSG)で活性化されるATPase(GSSG-ATPase)を精製するとともに、酵素学・物理化学・免疫学・生理学的面から検討を加えた。本酵素は分子量は同一であるが、GSSGやATPに対する親和性が異る2つのアイソザイムに分類された。高親和性アイソザイム(I型)と低親和性アイソザイム(II型)各々に対するポリクタナ-ル抗体を家兎で作製したところ、I型とII型では抗原性が同一であった。ヒト肝の細胞膜画分をSucrose濃度勾配による超遠沈法で調整し、トリトンX-100で可溶化した後、Mancini法で検討したところ赤血球酵素に対する抗体と交叉反応を示したことより、肝細膜にも同様の酵素が存在すると考えられた。精製したI型、II型アイソザイムとも細胞膜の反転小胞と抗体が結合したことから、抗原決定部位が膜の内側に存在していると考えられた。各アイソザイムをリン脂質で調製した人工膜に再構築し、グルタチオン輸送活性と酵素活性を測定したところ、I型の人工膜では輸送活性が25nmol/mg protein/min,GSSG-ATPase活性が25nmol pi released/mg protein/min。II型の人工膜では輸送活性が248nmol/mg protein/min、GSSG-ATP活性が133nmol pi released/mg prtein/minと、両アイソザイムとも酵素活性とGSSG輸送活性を示した。還元型グルタチオン(GSH)を添加しても酵素活性と輸送活性と示さなかったことから、本酵素はGSSG輸送に関与するものであると考えられた。更に病態的意義を知る目的で、赤血球を反転させて、荷電粒子表面に結合させた膜反転粒子を調整し、GSSG-ATPase活性を測定することが可能となった。
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