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褐色脂肪組織(BAT)での熱産生は、エネルギ-出納を消費の側から自律的に調節するのに重要な役割を果しており、その機能障害は肥満の成因の一つと考えられている。本研究では、満腹中枢とされている視床下部膜内側核(VMH)と交感神経がBAT機能をどのように調節するのかを明らかにすべく、ラットでの実験を行い、以下の成果を得た。
(1)VWHを電気的に刺激するとBATでの交感神経活性(ノルエピネフリンの代謝回転速度)が数倍に上昇した。これと並行して、BAT組織温度とグルコ-ス利用(非代謝性グルコ-ス誘導体2-デオキシングルコ-スの細胞内とりこみ)も著増したが、交感神経を予め切除しておくと、VMH刺激効果は消失した。これらの結果から、VMHは満腹中枢のみならず自律神経の中枢でもあり、交感神経を介してBATの熱産生を制御していることが判明した。
(2)VMHを電気破壊すると、ラットは過食となり肥満するが、この時BAT機能(グルコ-ス利用や交感神経刺激に対する発熱応答)も著しく減弱していた。従って、この視床下部性肥満は、エネルギ-の過剰摂取に加えてBATの機能障害によるエネルギ-消費の減少にも起因するとの新鋭を提唱した。
(3)同量の食物を経口的に摂取させた場合とチュ-ブで胃内に直接投与した場合とで比較すると、前者の方が交感神経-BAT機能の活性化が著しく、体脂肪の蓄積も少なかった。これらの結果から、BATの熱産生を始めとするエネルギ-消費の自律的調節に、味覚などの口腔咽頭部知覚が重要な役割を果していると結論した。エネルギ-代謝調節に対する味覚の関与については、従来摂食行動にのみ限定されていたが、本研究により、エネルギ-消費についても同様の作用を持つことが明らかになったので、肥満の予防、治療法に新しい可能性を示すものとして、注目されている。
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