63年度においてキニノ-ゲン及びカルパインの精製、それらの複合体形成さらにモノクロ-ナル抗体の作製が完了した。調整したモノクロ-ナル抗体を用いて、64年度の研究を推進した。 〔1〕モノクロ-ナル抗体を用いた複合体の微量定量法(酵素免疫測定法)の確立:血漿中に出現してくる複合体は極めて微量と考えられるので、高感度定量法を新たに開発した。多検体を処理するために固相としてポリステレン製マイクロタイタ-プレ-トを用い、反応ウェル内にキニノ-ゲンに対するポリクロ-ナル抗体(アフィニティ-精製したIgG)をコ-トレ、被検体血漿を加えた。次いでHRPO標識したそれぞれの複合体に対するモノクロ-ナル抗体を加えて反応を行った。基質としてO-フェニレンジィアミンを用い、492nmで2波長マイクトタイタ-プレ-ト光度計を用いて行った。 〔2〕複合体の測定と臨床応用:種々の炎症、癌、筋疾患、自己免疫疾患等の患者及び正常人から血漿を採取し、複合体の濃度の測定を行い、上記疾患での複合体の動態と疾患の重症度との関連性を解析し、診断、病態の把握、治療方針決定等への臨床応用を試みた。特に種々の肝疾患の血漿中の複合体量を測定したが、正常人血漿中における複合体量が100ng/ml以下(n=17)であるのに対し、肝癌患者では10例中5例において、肝硬変3例中2例で複合体の異常な高値(最大426ng/ml)が観察された。このことは細胞破壊や炎症が起こっている組織から多量のチオ-ルプロティナ-ゼが逸脱し、それらキニノ-ゲンが補捉することによって生体防御機構が働いていること示していると考えられた。
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