昭和63年度および平成元年度に与えられた科研費(一般研究C)により、高分子および低分子キニノ-ゲンとカルパインIの精製が完了した。現在、人肝臓よりカルパインIIとカテプシンB、H、L(特にL)の精製を試みている。また複合体形成の予備実験を行ったが、カルパインIと高分子キニノ-ゲンは70μMのCa^<2+>の存在下において、モル比1:1で容易に複合体形成を行うことを確認した。特に高分子キニノ-ゲン・カルパインI複合体を特異的に認識するモノクロ-ナル抗体の作製を試み、数種類(HCl1〜5)得ることもできた。またその量的調整も終えることができた。これらを用いて酵素免疫測定法をサンドイッチ法で行ったが、各疾患のうち、特に肝疾患(慢性疾患、肝硬変、肝癌)において、血漿中のこの複合体が高値(100〜700ng/ml)を示すことが明らかとなり(正常値は〜50ng/ml)、癌やその他の疾患の場における細胞破壊の程度がこの複合体に反映することが判明した。キニノ-ゲン・カルパインI複合体に見られる様な非共有結合による複合体の安定化には架橋剤(disuccinimidyl suberate)を用いることが有効であったが、この方法を用いることによって、キニノ-ゲンとカルパインII、カテプシンB、H、L等の複合体の安定化も可能となり、更にこれら複合体に対するモノクロ-ナル抗体も作製可能となった。 今後、更に症例数、検体数ともに増し、キニノ-ゲン・カルパイン複合体の種々の疾患での動態の正確な把握に努める予定である。
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