慢性関節リウマチ (以下RA) の滑膜病変および骨破壊病変において重要な役割をはたしていると考えられる。classII抗原陽性細胞 (DR陽性細胞) について以下の検討を行った。I.初期RAの滑膜組織像:発症1年以内の早期RA患者より採取した滑膜組織を、免疫組織学的、電顕的に観察した。いまだliningcellの増生やリンパ球浸潤の目立たない初期のRA滑膜において、すでに小血管周囲に細長い胞体を有したDR陽性細胞の出現がみられ、電顕的にはマクロファージ様の形態を示すものの貪食像はなく、リンパ球とのナーシング現象を示すなど免疫学的特異性が示唆された。今後、この細胞が病変の進行とともにどのような動態を示すかについて解析を行いたい。II.螢光抗体法二重染色によるDR陽性細胞の解析:螢光抗体二重染色を応用してDR陽性細胞のポピュレーションについて考察した。進行期のRAでは、リンパ球、血管内皮を含めて様々なDR陽性細胞が観察ささるが、今回はとくにマクロファージ系細胞の表面マーカーとHLA/DR抗原の二重染色を行い、組織球ないしマクロファージ様のDR陽性細胞について検討した。この結果、これまで単にDR陽性細胞としてあつかってきたものは、表面マーカー的に数種のポピュレーションに分けられ、局在の違いも観察された。これがDR陽性細胞のheterogeneityを示すものか、あるいは異なった分化、機能段階を示すものか、今後の研究課題と考える。III.培養系におけるDR陽性細胞の形態:RA患者から採取した滑膜からDR陽性細胞のクローニングを試みた。得られたクローンは大部分線維芽細胞様の紡錘形細胞で、これらはHLA/DR抗原陰性であった。一方、DR陽性細胞として1クローンを得たが、自己Tリンパ球と混合培養すると、Tリンパ球は著名に分裂増殖を示した。このクローンが初期RAの血管周囲に存在したDR陽性細胞に相当するものか、またいかなる免疫学的機序が作用しているかについて興味がもたれる。
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