研究概要 |
結核菌及びP,acnesの培養上清抗原に対するモノクロナール抗体産生クローンは、現在までに結核菌で2クローン、P,acnesで1クローン回収出来ているが、これらのいずれもサ症リンパ節病変部に陽性像を検出しえていない。一方、WHOから供与されたマイコバクテリアに対するモノクローナル抗体7種のうち4種(IT-27、23、15、13)が結核病変部に陽性で、そのうちの1種(IT-27)のみがサ症及び結核症の類上皮細胞肉芽腫内に陽性であった。IT-27は、サ症リンパ節においては、これまでの抗MDP抗体による反応陽性物質の局在にほぼ一致しており、この2つの抗体は、同じ局在を示すそれぞれの菌体由来の抗原物質を認識しているものと思われた。またIT-27はELISA法において結核菌、P,acnes両者の培養上清成分(TB_<SUP>PA┣D2SUP)と反応し、これらの成分のHPLC分取分画のDotBlot法による解析及びSDS-PAGEによる電気泳動では、IT-27の認識している抗原は分子量約65000の蛋白である事がわかった。現在、サ症肉芽腫内に存在するMDPの起源菌の最終的な決定法として、結核菌及びP,acnes両者の培養上清からこの蛋白分画を精製し、それぞれをマウスに免疫する事により、サ症リンパ節組織切片に陽性像を呈し、しかも結核菌またはP,,ancesのどちらか一方とのみ反応しうるハイブリドーマクローンの回収操作を継続中である。現在までの結論としては、サ症に特徴的に観察されるH-W小体、およびIgA、IgMを結合したsinus macrophage内の貧食物質は、その多くが、MDPおよびWHOモノクロナール抗体IT-27で陽性像を呈する事から、これらが何等かの菌体と関連した物質であると考えられる。また今回、類上皮細胞およびラングスハンス巨細胞内にMDPの局在に一致して、WHOから供与されたIT-27反応生のbacterial productが証明された事は、MDPを有するなんらかの菌体が、サルコイドーシス起因体としてサ症肉芽腫の形成に関与している事は、もはや疑いの余地はないものと考えられる。
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