ある特定の方向への分化が明らかな肉腫で部分的にその分化が不明瞭となり、悪性線維性組織球腫や低分化の線維肉腫に類似する組織像が出現する脱分化型肉腫の脱分化部の腫瘍細胞の性格を明らかにし、それを分化した部ならびに悪性線維性組織球腫の腫瘍細胞と比較しつつその形態発生を考察し、更には脱分化を起こした肉腫の生物学的態度を明確にしようと試みた。 九州大学医学部第二病理において収集されいてる1085例の軟部肉腫を検討した結果、全脂肪肉腫128例の11%(高分化型脂肪肉腫48例の29%に相当する14例、平滑筋肉腫105例中6例(6%)、骨外性軟骨肉腫39例中5例(13%)ならびに横紋筋肉腫98例中2例(2%)が未分化な部分を有するいわゆる脱分化型軟部肉腫であり、脱分化型肉腫はそれほどまれな軟部肉腫ではなく、また特殊な肉腫に限定されないことが明らかになった。これらの脱分化型軟部肉腫および対照とした軟部悪性線維性組織球腫32例を主に市販の種々の抗体およびレクチンを用いて免疫組織化学的ならびにレクチン組織化学的に検討し、あわせて電子顕微鏡的にも観察したところ、脱分化部はまれに一部で母肉腫の性格を発現するものの、組織化学的ならびに超微形態学的に悪性線維性組織球腫に類似しており、特殊な分化を示さない未分化間葉細胞のクロ-ンの増殖がいわゆる脱分化部に相当することが想定された。また悪性線維性組織球腫自身も単球大食細胞系由来の腫瘍とは考えがたく、未分化間葉細胞を組織起源とする可能性が示唆された。 予後調査の結果、27例のうち19例は死亡しており、脱分化部を有する軟部肉腫は悪性度の高い肉腫であり、分化型軟部肉腫における脱分化部の存在の認識は治療方針決定および予後判定に重要と思われた。
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