研究課題/領域番号 |
63570146
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人体病理学
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
佐藤 栄一 鹿児島大学, 医学部, 教授 (60004579)
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研究分担者 |
後藤 正道 国立療養所星塚敬愛園, 研究検査科, 科長
蓮井 和久 鹿児島大学, 医学部, 講師 (70198703)
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研究期間 (年度) |
1988 – 1990
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キーワード | 成人T細胞白血病・リンパ腫 / レトロウイルス / Tリンパ球 / 神経病理 / 免疫組織化学 / PCR / HTLVーI associated myelopathy(HAM) |
研究概要 |
レトロウイルスHTLVーIによる神経障害発現を理解するために、以下の病理学的研究を行なった。(1)成人T細胞白血病(ATL)では神経症状を伴うことが多いため、剖検例41例の中枢神経を検索した。腫瘍細胞の直接浸潤が54%に認められ、意識混濁や痴呆状態と関連していた。一部に巨細胞やAIDSと類似した白質の空胞変性が見られたが、HAM(HTLVーI associated myelpaーthy)と共通する脊髄の炎症所見は得られなかった。(2)HTLVーI感染によって活性化したT細胞が脳血管関門を通過することがHAMの発症に関与しているのではないかと考え、HTLVーI抗体陽性(キャリア)の4例、陰性の7例、ATL非集積地域の剖検例19例の胸髄内のT細胞密度を求めたが、3群間に明らかな差は見られなかった。一方、臨床的にHAMを疑われたものの病理学的には非定型像を示した一例では3倍以上のT細胞が見いたされ、HAMの発症を理解する上でT細胞の組織計測は有用であると考えられた。(3)典型的なHAM剖検例にploymerase chain reaction(PCR)を行ない、HTLVーIウイルスゲノムの臓器内分布を検討した。HTLVーIのTax領域遺伝子SK45は肺・腸腰筋・脊髄・坐骨神経に陽性、リンパ節・延髄・視神経は弱陽性・腎・大脳・小脳・中脳・橋・HTLVーI陰性対照は陰性であった。HTLVーIによる肺病変が注目されているが、HAMの肺・肝・腸腰筋などに脊髄同様ウイルス遺伝子を認め、HTLVーIは予想以上に多くの臓器の疾患と関係している可能性が示唆された。以上、3年間にわたってHTLVーIと神経組織の関連を調べた。当初の目標の一つのIn situ hybriーdizationによるHTLVーIの組織内局在の証明は成功しなかったが、リンパ球浸潤陽性でPCR陰性の部位(大脳など)があることなどから、HTLVーIの神経組織への直接侵入の可能性は残っていると考えられた。
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