本研究では、ヒト褐色細胞腫(pheo)においてtryrosine(T)→DOPA→dopamine→ノルアドレナリン(NA)→アドレナリン(A)が細胞内の何処で行われているか、あるいはエンケファリンの様な、ペプチドのprocessingとCA合成との分泌経路での関連などを中心に細胞レベルで酵素抗体法により検討した。〔材料・方法〕8例のpheoを対象にホルマリン固定パラフィン切片上で酵素抗体法ABC法によりカテコールアミン合成酵素であるT水酸化酵素(TH)、DBH、PNMTなどの局在を検討した。又、正常髄質内での局在も併せmet-enkephalin(ME)の局在を比較観察した。又、一部の症例はprimary culture(培養後7日)を施行し、TH、DBH、PNMT、MEの細胞内局在を観察し、又、免疫電顕pre-embedding methodによる小器官内の局在観察も試みた。〔結果・考察〕8例中MEは既報告のごとく全例に認められた。THの局在は全例に認められたがPNMTは血中のAが高値を示す3症例に陽性細胞を多く認めた。pheoにおけるPNMTの染色強度は正常髄質に比し弱い傾向にあった。PNMTの局在とMEの局在は正常髄質、pheoとも一致しなかった。これらの結果は多くのpheoがCA合成能を有しているがアドレナリン合成は選択的に行われていることを示唆している。primary culture、免疫電顕による検索ではDBH、PNMTとも顆粒内に局在し、pheoにおけるNA、Aの合成が顆粒内で行われペプチドと共に分泌顆粒として放出されることが示唆された。〔今後の課題〕1.pheoは多ペプチド産生性でありCA合成(特にA)と共存するペプチドを更に検索する。2.THの局在はこれまで細胞質と考えられてきたが今回の検索では顆粒内にも認められ、THの局在の詳細を今後更に明らかにする必要がある。
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