研究概要 |
副腎髄質由来褐色細胞腫(pheo)10例を対象にホルマリン固定パラフィン切片を用いカテコ-ルアミン合成酵素tyrosine hydroxylase(TH)、dopamine β-hydroxylase(DBH)、phenylethanolamine β-methyltransferase(PNMT)ならびにmet-enkephalin(ME)、ニュ-ロペプチドY(NPY)などのペプチドの局在を観察した。方法としてABC法を用いた。結果としてpheo全例がTH陽性であったがPNMTは血中アドレナリン(A)高値の5例に陽性となり染色結果は腫瘍の機能を反映していた。成人髄質にも多数のPNMT陽性細胞が存在した。特に胎児副腎髄質には多数の細胞がPNMT強陽性であり胎児における活発なA合成が示唆された。Pheo全例ME陽性であったが一例を除いてはTH、PNMTとの共存は見られなかった。正常髄質でも共存は見られずTHと,MEの共存の見られた一例は腫瘍化に伴う異常な産生能の発現と考えられた。Primary cultureした一例ではTH、DBH,PNMT、MEが強陽性であった。THはび慢性、DBH、PNMT、MEは顆粒状に染色された。同一症例に免疫電顕pre-embeding methodを施行したが、THは細胞質、分泌顆粒、DBHは分泌顆粒内に認められた。ノルアドレナリン、アドレナリンの分泌顆粒を介する分泌が示唆された。細胞質と分泌顆粒内のTHの存在は初期のカテコ-ルアミンの合成に関するcomplex mechanismが示唆された。今回用いた抗DBH抗体は染色性が弱く、ウシDBHを抗原としたためのspecies differenceあるいは標本作製中の抗原性の失活などが原因と考えられDBHの免疫組織化学は今後の課題と考えられた。 副腎外の後腹膜原発のpheoではPNMTは陰性であり血中A値も低値でありA合成能は認められなかった。われわれの例にはOragan of Zuckerkandle原発例は見られなかった。一部にノルアドレナリン(NA)高値例もありその場合はTHが陽性であり腫瘍細胞でのNA合成が示唆された。
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