研究概要 |
目的:癌組織から抽出された塩基性蛋白、いわゆる腫瘍塩基性蛋白は脳神経髄鞘蛋白と免疫学的交叉を示す物質で、一方髄鞘蛋白類縁物質は細胞増殖能を有していることも知られている。そこで我々は上記課題の下で先ず腫瘍塩基性蛋白を抽出し、髄鞘蛋白と分子量的に近似しているか否かを検討し、その後その蛋白のアミノ酸構造や増殖能について検索を試みた。 材料、方法:剖検時に得た乳癌組織からアセトン抽出法にて得られた蛋白分画をSDS-ポリアクリルアミド電気泳動にて分析を行なった。 結果:腫瘍組織内には脳神経髄鞘蛋白の分子量とほぼ同じ約18,000の分子量に相当する分画が存在しているのが分かった。それをイムノブロッティングにて確認すると共に、この蛋白分画を取り出し、アミノ酸の構造解析を行う一方、既に知られている能神経髄鞘蛋白のそれとの類似性の有無およびその度合いについて検討している段階である。さらにその他の腫瘍塩基性蛋白の分画にも髄鞘蛋白のそれと類似性のあるものが存在するか否か症例を変え再度検討を試みている。また予備実験として正常および腫瘍細胞培養条件下にて本蛋白分画の添加による増殖程度の変化の有無、程度について検索を開始した。 考察:腫瘍塩基性蛋白のあるものは髄鞘蛋白類縁物質であることが示唆される結果が得られたと考える。
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