大脳基底核病変発生における血管構築の重要性

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570154
• 研究機関: 東京医科歯科大学
• 研究代表者: 松尾 祟 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教授 (00165771)
• キーワード: 大脳基底核 / 血管構築 / 一酸化炭素中毒 / 高血圧性脳出血

研究概要

大脳基底核における選択的病変、つまり淡蒼球での一酸化炭素(CO)中毒による病変および被殻における高血圧性脳出血の発生要因を血管構築の特徴により比較検討した。
(1)昨年度に引き続き猫15匹を用い脳血管鋳型を作成し、その幾何学的計測(血管の直径・長さ・分岐角・本数)を行った。計測には研究費によって購入した画像解析システムを用いた。
(2)血管の幾何学的デ-タにより、淡蒼球と被殻では次の違いのあることが分かった。
1.淡蒼球を栄養とする血管は主幹よりかなり細い枝(主幹の1/5以下)として分岐しそして長い走行を経て脳実質に入る。これに対し被殻の血管はより大きい径で分岐し、その後すぐに脳実質内に入る。
2.毛細血管の密度は被殻の方が2倍程度大きい。
(3)上記の幾何学的デ-タを血行力学的に解析し、以下のことがわかった。
1.淡蒼球の血管では、主幹より枝別れする部分および脳実質に入るまでに大きな圧力降下が起きる(12.4±4.2mmHg)。この圧力降下は、CO中毒による循環動態の変化(低酸素血症ー低血圧)が加わるときに淡蒼球への血液供給に強く影響する。
2.被殻の血管においては脳実質に到るまでの間での圧力降下は小さい(3.2±2.1mmHg)。このことは脳実質に入ってからの圧力降下が大きいことを示している。高血圧の長期負荷は被殻の小動脈に大きな負荷となることが考えられ、血管壁の壊死や小動脈瘤の発生に血管構築の特性が強く関与していると考えられる。
このように動脈構築の特異性が各々の病変発生に関与しうることが明らかになった。

研究成果

• [文献書誌] (松尾祟),桶田理喜,高橋道雄,船田みどり: "血管の幾何学的構造にみられる規則性" 形の科学会報. 11月号. 72-76 (1989)
• [文献書誌] (松尾祟),桶田理喜: "中枢神経系病変局在の機序に関する研究" 東京医科歯科大学難治疾患研究所年報. 16. 133-137 (1988)
• [文献書誌] (T.Matsuo),R.Okeda and F.Higashino: "Hydrodynamics of arterial branching-the effect of arterial branching on distal blood supply" Biorheology. 26. 799-811 (1989)
• [文献書誌] (T.Matsuo),R.Okeda: "Morphometry of arterial bifurcations in the pial arterial tree of the cat brain" Forma. 4. (1989)
• [文献書誌] (T.Matsuo),R.Okeda: "Morphometry of the brain arterial tree" Proceedings of 2nd International Symposium on Biofluid Mechanics and Biorhelogy. 277-278 (1989)