研究概要 |
二系統のヒト細胞芽細胞腫培養細胞(V79、WERI-1)及び非遺伝性網膜芽細胞腫(1歳、男児)初代細胞の継代維持を行なった。各細胞は、RPM11640培地(20%FBSグルタミン添加、阪大微研)に単層培養とし、37℃、5%CO_2の培養条件下に継代が可能であった。初代培養に用いた腫瘍の組織型は分化型で、Honer Wright型ロゼットの形成が顕著であった。分化誘導には、2×10^<-4>MN^6、O^<12>dibutyryl cyclic AMP、2.5×10^<-7>M retionoic acid(Sigma,St.Louis,Mo)を、60mm径のtissue culture dish(Falcon) に添加して行なった。各細胞間に若干差異はあるが、添加後8時間で形態的に軸策突起を有し、神経特異蛋白陽性細胞群を確認できた。協同研究者(沢田)の電顕的検討では、分化した腫瘍細胞には細胞内小器官、特に接着装置の増加や軸策突起内の微少管の増加以外には、アデノウィルス12型誘発網膜腫瘍細胞を用いた実験系で観察されたフラスコとの接着面の細胞膜に著変は認められなかった。蛍光抗体法による免疫組織化学的検討(小林、田坂)では、フィブロネクチン、ラミニン、4型コラーゲンは前二者の培養細胞細胞膜に陽性、後者で陰性であった。これら細胞外マトリックスの局在のパターンは、フィブロネクチンで繊維状或いは瀰慢性に、ラミニン、4型コラーゲンは顆粒状に、細胞膜に分布していた。誘導物質添加後の腫瘍細胞及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存、次年度のSDS-PAGE Systemによる生化学的定量に用いる。次に網膜芽細胞腫瘍培養細胞の細胞膜のレクチン結合パターンをHRP標識ConA、PNA、WGA抗体を用いて比較検討した。Con A、WGAは細胞膜と細胞内に陽性で、ロゼット様に配列する細胞群に瀰慢性に強陽性であった。WGAを網膜外節に一致して分布することから腫瘍の起源を考える上で興味深い。今年度の研究では、細胞膜の糖鎖構造と細胞外マトリックスの局在に関して新知見が得られた。
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