研究概要 |
今年度は、昨年度に継続して細胞外マトリックス(fibronectin,Type IV collagen)の定量的検索を行なった。誘導物質添加後の腫瘍細胞(Y79および初代培養株)及び培養dish内の培地は凍結保存とし、細胞凍結保存器に保存した。凍結保存した培地は濃縮し、90%エタノ-ルと混合して、-20℃で分離、電気泳動緩衝液(20%sodium dedecyl sulfate[SDS],10%glycerol,65mM Tris HClpH6.8,4M urea,Bromphenol blue)に融解して、SDS-polyacrylamide gel electrophoresis(SDS-PAGE)で分子量による抽出を試みた。また、La btek chamber(Miles Co.MN)に培養した細胞系は、分化誘導後、風乾、冷アセトン固定として蛍光抗体方間接方による細胞外マトリックス(フィブロネクチン、4型コラ-ゲン)の局在を検討した。特異血清はいずれも希釈は500:1である。SDS-PAGEによる泳動パタ-ンからは、培地中の分子量480kdのフィブロネクチンが同定され、4型コラ-ゲンに関しては検出は不成功であった。これら細胞外マトリックスの局在のパタ-ンは、フィブロネクチンで線維状或いは瀰慢性に、4型コラ-ゲンは顆粒状に、形質膜に分布していた。本研究をとおして、形態学的に分化の誘導された腫瘍細胞には神経伝達物質代謝酵素(glufamate decarboxylase)の活性増加が確認され、機能的分化の誘導も示唆される。超微形態像で、神経分泌顆粒やシナプス様構造もみられ、神経性腫瘍としての性格が明かとなった。また、培養細胞からの細胞外マトリックス、特にフィブロネクチンの増加は、軸索突起の形成、接着性の増加など細胞骨格の再構成を示唆している。此迄に得られた知見から、網膜芽細胞腫における分化誘導療法の導入にアプロ-チするために、今後さらに検索を継続する予定である。
|