培養ニワトリ正常繊維芽細胞におけるコラーゲン結合性熱ショック蛋白質(HSP47)の細胞内分布とI型プロコラーゲンの細胞内分布の相関を蛍光抗体二重染色法で比較検討した。 1.アスコルビン酸が十分存在しない通常条件の培養下では、細胞内の小胞体(ER)内のプロコラーゲンが顆粒状に認められる細胞においては、HSP47の分布はプロコラーゲンの分布とよく一致したが、ER内にプロコラーゲンを認めない細胞では、HSP47は細胞全体に細かな網目状に存在し、ERにおけるプロコラーゲンの存在・分布様式とHSP47の分布様式に強い相関を認めた。 2.アスコルビン酸を添加して、プロコラーゲンのプロリン残基・リジン残基を十分に水酸化させ、αーヘリックス形成を促進すると、2時間から3時間後には顆粒状にERに貯留していたプロコラーゲンは細胞外へ分泌されて細胞内には殆ど存在しなくなった。これに伴って、HSP47のERにおける分布も顆粒状から網目状へと変化した。 3.プロコラーゲンのαーヘリックス形成の融解温度を超える高温下(43℃)で培養すると、たとえアスコルビン酸を添加してもプロコラーゲンは分泌されず、顆粒状にER内に貯留した。この時、HSP47も同様にERに顆粒状に分布し、両者の分布はよく一致した。水酸化酵素の阻害剤であるdd′ージピリジルを添加した時も同様な結果が得られた。 これらの結果は、正常なαーヘリックス構造を示すプロコラーゲンはERからゴルジ装置へ円滑に輸送されるが、αーヘリックス構造が正しく形成されないときにはERに貯留してゴルジ装置への輸送が妨げられていることを示唆する。HSP47が貯留したプロコラーゲンとよく共存することから、異常構造を示すプロコラーゲンと結合することで、その細胞内輸送に重要な役割を演じていることが示唆された。
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