T細胞の関与する遅延型アレルギー反応には、ツベルクリン皮内反応を代表とする古典型と、皮膚炎症局所への好塩基球の集積を特徴とするジョンズ・モート型(J-M型)反応の存在が知られている。ツベルクリン型がT細胞とマクロファージの相互作用に基く炎症であることは確立された事実として認められてきたが、J-M型反応は動物実験モデル系で格好なものがなく、その免疫細胞学的機序は未解明のままである。 本研究では本年度、純系マウスで化学的修飾蛋白(メチル化血清アルブミン、MHSA)と抗原として用い、J-M型アレルギー反応の実験系を確立した。 1.正常マウスにおいて、ツベルクリン型反応が完全フロインド・アジュバントとMHSAの併用で感作後8-12日をピークとする足蹠反応として観察されるのに対し、不完全フロイント・アジュバントと抗原により感作された動物では感作後28日目前後をピークとする遅延型足蹠反応を成立させることが出来た。 2.この足蹠反応は鉄蛋白フェリチンの前投与で抑制されず、ツベルクリン型と異なりマクロファージへの依存性が証明されなかった。 3.この新しい足蹠反応は肥満細胞欠損マウス(W/W^v)では局所の抗原刺激のみでは惹起されなかったが、予め局所に骨髄由来の培養肥満細胞を局所に注入しておくことにより成立させることが出来た。 4.W/W^vマウス由来の感作T細胞を正常マウスに移入することにより伝達可能であったが、正常マウス由来の感作T細胞をW/W^vマウスに移入しても足蹠反応は伝達されえなかった。 本年度の研究結果は、マウスで従来のツベルクリン型反応とは異なる遅延型アレルギーの実験系の確立とこの反応がT細胞と肥満細胞依存性であることを示唆する観察である。
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