アストログリア細胞は脳卒中易発症ラット(SHRSP)、脳卒中難発症ラット(SHRSR)、正常血圧ラット(WKY)胎児脳より分離培養した。すなわち、胎児から脳を摘出し、脳表面の血管、軟膜を除去し、約2mmの小塊にした。その小塊をリン酸緩衝生理食塩水で洗浄後、抗生物質含有トリプシン易(0.25%)で37℃30分間消化した。遊離した細胞をパスツールピペットでけん濁した後、200g5分間遠心して細胞を集めた。細胞はさらに3回、ダルベッコのMEMで洗浄した。初代培養細胞は約12日間培養した後に使用し、また、さらに2-3代継代したものについても実験に供した。アストログリア細胞の同定は同細胞に特異的存在するグリア繊維酸性蛋白質の抗体を用い、二抗体法で行った。上記方法で分離した細胞は全てグリア繊維酸性蛋白の陽性反応を示した。光学顕微鏡による形態学的観察では3系統の間に差異はなかった。この細胞を用いて細胞増殖能を3系統で比較したところ、doubling timeはSHRSP、SHRSR、WKYそれぞれ21.1、18.9、30.2時間であり、WKYはSHRSP、SHRSRに比べ有意に長いdoubling timeを示した。我々は既に大動脈由来平滑筋細胞で同様の結果を得ており、由来の異なる細胞(平滑筋細胞は中胚葉、アストログリア細胞は外胚葉)で同じ性質を有することは興味あることであり、この性質は高血圧発症に関係する遺伝子の表現型の一つであると考えられる。また、各細胞の総コレステロール量を調べたところ、コレステロール量はWKYに比べSHRSP、SHRSRにおいて有意に低下していた。さらに、アストログリア細胞をトリプシン処理して遊離状態にした後、α刺激薬であるフェニレフリンによる細胞内Ca^<++>の動態を螢光色素(Fura2)で調べたところ、α刺激により細胞内Ca^<++>が苦しく上昇することが明らかとなった。
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