研究概要 |
前年の研究結果から脳卒中易発症ラット(SHRSP)脳由来アストログリアが正常血圧ラット(WKY)由来に比べ、増殖能ガ有意に亢進しており、また、コレステロ-ル量が有意に低下していることが明らかになった。本年はこのSHRSPの増殖能亢進が細胞分裂サイクルのどの部分に差異があるのかを明らかにすべく研究を行った。即ち、SHRSP、脳卒中難発症ラット(SHRSR)及びWKY由来アストログリアの対数増殖期に培地を0.2%胎児牛血清(FCS)含有DMFMに変え、さらに48時間培養した後、10%FCSを再添加し、6、9、12、15、18時間後のDNA合成能を[^3H]Thymidineを用いて調べた。その結果、G_1期は9〜12時間の間で、G_1期からS期への移行がWKY、SHRSR、SHRSPの順に高いことが明らかになった。よって、SHRSPの増殖能亢進はG_1からS期への移行率の差に起因すると考えられ、同様の結果が大動脈由来培養平滑筋細胞でも認められている。一方、最近の我々の研究からSHRSPの肝臓でのコレステロ-ル合成能の低下は従来から考えられているHMGCoA還元酵素に起因するのではなく、それ以後の合成系の異常に起因することが明らかになった。アストログリア細胞においても同様な異常が存在するか否かを検討するために[^<14>C]酢酸、[^<14>C]メバロン酸を用いて検討した。その結果,酢酸からのコレステロ-ル合成はWKY、SHRSR、SHRSPの順に低下していたが、メバロン酸からの合成は3群間に差異はなかった。よって、コレステロ-ルの合成の調節が肝臓とアストログリアでは異なっている可能性がある。また、アストログリアはα刺激に対し、細胞内Ca^<++>が上昇することが知られているが、3群でフェントラミン刺激に対する細胞内Ca^<++>量を比較したところ、細胞内Ca^<++>の上昇はWKYに比べSHRの方が大きかった。無刺激の場合には3群間に差異は認められなかった。
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