1.病原菌を中心とした各種細菌由来のプロテアーゼについて、ハーゲマン因子活性化能の有無を、in vivo及びin vitroで、モルモットの系を用いて検討した。セラチア60K及び73Kプロテアーゼ、緑膿菌アルカリプロテアーゼ及びエラスターゼ、ビブリオ菌プロテアーゼ、好熱菌サーモライシン、及び枯草菌サブティリシンが、セラチア56Kプロテアーゼと同様に、ハーゲマン因子を活性化し、皮内注射により、カリクレイン・キニン系を介した血管透過性亢進を惹起した。黄色ブドウ球菌V8プロテアーゼ及び真菌由来のストレプトマイセスプロテアーゼはハーゲマン因子を活性化しなかった。 2.ハーゲマン因子・カリクレイン・キニン系という連鎖系のうち、ハーゲマン因子だけが細菌性プロテアーゼによる活性化の対象になるのか否かを、モルモット血漿プレカリクレインや高分子キニノーゲン及びそれらの特異抗体を用いて、in vivo及びin vitroで検討した。上記プロテアーゼのうち、サーモライシン、サブティリシン及びビブリオ菌プロテアーゼは、プレカリクレインを直接活性化することも可能であったが、残りのプロテアーゼはその能力がなかった。一方、V8プロテアーゼ及びストレプトマイセスプロテアーゼは、高分子キニノーゲンから直接キニンを遊離した。従って、この連鎖系の活性化からみると、細菌性プロテアーゼは、ハーゲマン因子のみを活性化するもの、ハーゲマン因子とプレカリクレインを共に活性化するもの、及び、両者を活性化しないがキニノーゲンから直接キニンを遊離するものの3種に、暫定的に分類されることが明かとなった。
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