血漿プロテア-ゼ前駆体であるハ-ゲマン因子(HF)が、活性化されてHFaになると、血漿プレカリクレイン(PK)をカリクレイン(kal)に活性化し、更にkalは、血漿高分子キニノ-ゲン(HMWKgn)に作用して生理活性物質ブラディキニン(BK)を遊離することが、in vitroの実験により知られている。この連鎖反応がin vivo、特に皮内血管外織においても発現し、結果として血管透過性亢進が惹起されることが、薬理学的手法、及び、免疫学的にPKを除去したモルモットを用いた今回の研究により、まず明らかになった。また、この透過性亢進は、血漿中の巨大なプロテア-ゼインヒビタ-であるα2マクログロブリン(α2MG)を、局所血管外組織に動員するが、このα2MGが逆に局所のHFaを抑制することにより透過性亢進を終息させていることが、免疫学的にα2MGを除去したモルモットに透過性亢進延長を認めることにより示唆される。このHF-PK-BK系に対する活性化因子として、病原微生物等由来の11種のプロテア-ゼについて検討した。今回、セラチウ菌培養上清中から精製した73Kプロテア-ゼを含め、9種のプロテア-ゼがin vivo及びin vitroにおいてHFを活性化し、うち3種は直接PKをも活性化した。活性化しなかった2種も、HMWKよりBK様分子を遊離して透過性を亢進させた。従って、HF-PK-BK系は広範な微生物性プロテア-ゼにより活性化され、透過性亢進を引き起こすことが明らかとなった。この透過性亢進により動員されたα2MGは、上記の負のフィ-ドバック系として関与しているのみならず、侵入細菌に由来する組織破壊性プロテア-ゼを阻害することが十分に期待できる。従って、HF-PK-BK系は、侵入細菌由来のプロテア-ゼの存在をモニタ-し、組織破壊を阻止するという生体防御的役割を持つ系であることが、今回の研究を通して強く示唆された。
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