V79細胞などの繊維芽細胞は2μm直径の蛍光性ラテックス粒子を貪食し、個々の細胞内の蛍光粒子数はその蛍光強度から測定することができる。フロ-サイトメトリ-においては個々の細胞のDNA量とかRNA量など数種の測定パラメ-タ-の同時測定が可能であるが故、これらのパラメ-タ-と貪食活性との関連を直接に比較検討できる。又、フロ-サイトメトリ-においては統計に耐えうる多数の細胞を短時間で測定できるが故、貪食作用の詳細な動的解析が容易である。さらに貪食作用の測定において常に問題となっていた「細胞に貪食された粒子と細胞に接触しているだけの粒子」の区別も蛍光粒子の分光特性を利用して容易に行うことができる。本年度の目的は前年度の実験を続行すると共にその結果をまとめることにあった。フロ-サイトメトリ-による貪食活性の動的解析法についてまとめの段階で多くの確認すべき事柄が生じた。すなわち1)貪食のコンピュ-タ解析プログラムの改良、2)蛍光粒子の細胞周囲での平衡状態の達成の確認、3)マクロファ-ジのような高い貪食活性を有する細胞との比較検討、4)被貪食粒子としての粒子直径の比較検討、5)フロ-サイトメ-タ-のフィルタ-の分光特性の確認、6)細胞内粒子の局在が引き起こす蛍光CV値の増大についての数学的扱いによる説明の試み等を行った。これらの結果は研究成果報告書に記載した。これまで貪食のパラメ-タ-K及びnのうちパラメ-タ-nは貪食誘導活性の指標であるとのみ説明していたが、nの値の増加率の変化については未だはっきりとした説明ができていない。この意味に関しての説明は今後の課題である。
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