マンソン裂頭条虫プレロセルコイドより抽出したシステインプロテア-セ(P1.プロテ-ゼ)の反応性を、宿主高等動物骨格筋構造収縮性蛋白を基質にして調べ、以下の知見を得た。1)、P1.プロテア-ゼは、未変性のウサギアクチンおよびミオシンペプチドを切断した。このプロテア-ゼは、Fーアクチンに比べ、Gーアクチンに対し、著しく高い切断反応を示した。切断を受けたミオシン分子は、ATPase活性を保持していた。 2)、P1.プロテア-ゼを試験管内において、巨大な分子構造を持つ宿主筋原線維に反応させた。本プロテア-ゼは弛緩状態における筋原線維構成蛋白を切断した。筋原線維のthickーフィラメントの構成蛋白であるミオシンは、そのATPase活性中心構造を保ちつつ、このプロテア-ゼによって、切断、可溶化された。3)制御系蛋白を含む、宿主アクトミオシン(ミオシンーB)の試験管内収縮モデルである超沈澱に対するP1.プロテア-ゼの切断効果を調べた。アクトミオシン系は、P1.プロテア-ゼの添加によって、そのCa^<2+>感受性を失った。このプロテア-ゼの収縮制御系蛋白(トロポニンートロポミオシン系)に対する反応性を調べると、トロポニンーTサブユニット≧トロポニンーIサブユニット〉トロポミオシン〉トロポニンーCサブユニットの順にプロテア-ゼによる高い切断作用を受ける事が判った。以上、試験管内実験においては、P1.プロテア-ゼは宿主筋構造を破壊させ得る事が示唆された。
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