高IgE血症は蠕虫感染症の特徴的な宿主反応である。本研究は、各種蠕虫症患者のIgE産生機構を解析し、さらに高IgE血症を呈する高IgE症候魔と木村氏病とにおけるそれの比較を行うことで、蠕虫症におけるIgE産生の特徴を明らかにすることを目的とし、以下の結果を得た。 1.血中IgE値:鉤虫症、肝吸虫症、包虫症、糞線虫症の4種の蠕虫症におけるIgE値は健常人の15〜30倍に増加をみた。またIgE値の健常人との比較では、高IgE症群で80倍、木村氏病で30倍であった。 2.FcεR:末梢血リンパ球上のFcεRはモノクローナル抗体で染色後、フローサイトメトリーによって解析した。FcεR陽性Bリンパ球の頻度および細胞あたりのFcεR数は、各蠕虫症で健常人と同等であったが、他の2疾患では増加をみた。 3.IgE結合因子:モノクローナル抗体を用いたELISA法で定量したIgE結合因子量は、健常人と比較して、蠕虫症で同等、高IgE症候群では低下していた。 IgE産生の誘導に関係するとされるFcεRおよびIgE結合因子についての結果は、蠕虫症と他の2疾患で高IgEの発現機序に違いがあることを示唆し、蠕虫症では健常人の背景のまま高IgEとなっていると考えられる。 4.自発的IgE産生細胞:末梢血より純化したB細胞を培養すると、自発的IgE産生がみられる。高IgE症候群では、自発的IgE産生量は高値であったが、血中IgE値との相関をみなかった。一方、蠕虫症における自発的IgE産生は高値で、血中IgE値と相関したことから、蠕虫症における持続的高IgE血症の機序として、自発的IgE産生細胞の関与が示唆された。
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