研究概要 |
前年度の引き続きトキソプラズマ原虫のアミノ酸取り込みについて検討した。本原虫による活発なアミノ酸の取り込みは硫酸カリウム(45mM)を主体とした弱アルカリ性(pH8.2付近)の生理的緩衝液で認められた。また、硫酸ナトリウム緩衝液中でも取り込みが認められたが、硫酸カリウム緩衝液での半分程度に抑えられていた。後者における取り込みは5mMのNH_4の添加によって回復することがわかった。一方、硫酸カリウム緩衝液中では液のpHに依存して取り込み量が変化した。すなわち、アルカリ域で活発な取り込みが認められること。一方、酸性域では著しく抑制され、取り込み量と外液のpHとの間にはpH8.2から6.0までの範囲で強い相関(γ=0.9700)が認められた。陽イオンにカリウムを用いた緩衝液中では塩素イオンの影響は認められなかった。しかし、ナトリウムを用いた緩衝液中では塩素イオンは阻害的に作用した。これらの結果と既報のデ-タ(Endo,T.et al.,1987)を対照すると、トキソプラズマ原虫の細胞内pHレベルとアミノ酸吸収機構との間には重要な関係が存在するものと予測された。この問題は本原虫におけるアミノ酸吸収(輸送)機構のキ-ポイントと考えられることから、今後さらに検討する予定である。 SDSーPAGEを用いた解析によると、5分間の^<35>Sーmethioninの取り込み実験で標識された分子量約38,000のペプチドは、続く緩衝液中での培養により消失し、分子量約40,000,45,000のペプチドは逆に増量した。目下、本原虫の運動に伴って消長するペプチドの同定を行っている。
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