研究概要 |
前年に引続いてP.cepagia変異株を使っての光回復に関与する遺伝子のクロ-ン化を試みたが、ベクタ-、遺伝子発現、クロ-ンの洗濯の手法の点で非常な困難を経験したので、大腸菌の遺伝-分子生物学実験系を使って実験を再出発した。前年に作製したP.cepacia染色体ライブラリ-から、大腸菌の紫外線照射による染色体DNA損傷の修復を相補できるクロ-ンの分離を試みた。具体的な方法としては、ライブラリ-の宿主大腸菌S17-1株から、ベクタ-のテトラサイクリン耐性を選択マ-カ-として、大腸菌のphr(光回復)、uvrA(暗回復)、またはrecA(組換え修復)の各遺伝子に変異を持つ株に接合にりるP.cepaciaの染色体断片を持つプラスミドを伝達した。次にこれらの接合体、約1,200株について紫外線照射細胞を、可視光線の照射下、または暗所で培養した場合の生残細胞数を比較して相補能を調べた。その結果、phr、uvrAまたはrecA変異を相補できるクロ-ンが、それぞれ1つづつ得られた。大腸菌のphr変異の相補がP.cepaciaの野生型phr^+遺伝子により可能であった事実は、これら2菌種の光回復の生化学的な機構が同様、または類似したものによっていることを示している。しかし、P.cepaciaで得られた紫外線感受性変異株において暗回復能が認められないが、大腸菌のuvrA変異を相補できるクロ-ンが存在することは、P.cepaciaでは暗回復に関与する遺伝子(少くともその1部は)が発現していないことを示唆している。大腸菌のphr変異を相補するP.cepacia染色体片を持つプラスミドから、phr遺伝子をクロ-ン化、塩基配列を決定する実験は、本来の予定では完了している予定であったが、現在のところ進めている。
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