P.cepaciaの紫外線(UV)照射によるDNA損傷の光回復の遺伝学的解析を試みた。この菌種は人の日和見感染の起因菌として注目されており、またUV照射に対して強い光回復能を持つとされている。供試した約100株のP.cepaciaから、各種の性状に関して安定した変異株の得られるPCJ株を実験に適した株として選定した。P.cepaciaの野生株ではUV照射に対する強力な光回復が認められた。即ち、UV照射菌細胞を可視光線照射下で培養した場合に発生してくる集落数は、同じ温度で暗所で培養した場合より10^2〜10^4倍の範囲で多かった。野生型細胞をmethanesulfonic acid ethyl esterで処理して、17株のUV感受性変異株を分離した。野生型と比較すると、UV感受性変異株はすべて、光回復能をほとんど失っていた。野生株とUV感受性変異株とはmethanesulfonic acid ethyl esterおよびN-methtyl-N-ntro-N-nitrosoguanidineに対する感受性に相違は認められなかった。P.cepaciaの野生株のUV照射に対する生存能力は、大腸菌のuvrA変異株のそれに極めて類似していることが観察された。以上の事実から、P.cepaciaではUV照射によるDNA損傷の修復には光回復が、それが唯一のものでないにしろ、極めて重要な役を果たしていることが示唆された。P.cepaciaの光回復に関与している遺伝子のクロ-ン化を目的として、PCJ株の染色体遺伝子ライブラリ-から、大腸菌のphr(光回復不能)変異株を使って、この変異を相補できるクロ-ンの分離を試みた。その結果、1つのクロ-ンがこのphr変異を相補できることが分った。この事実からP.cepaciaでも、大腸菌の光回復と、生化学的に類似の機構が存在、機能していることが示唆された。現在、関係した遺伝子のサブクロ-ン化を進めている。
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