セラチアの線毛は、赤血球凝集性と線毛抗体を用いた血清学的な差異からMS、MR及び赤血球凝集を示さない線毛の3種類に大別できる。セラチアUS5株の保有するMS線毛遺伝子(smfー1)及び赤血球凝集を示さないcrypticな線毛遺伝子(smfー3)は、その遺伝子をクロ-ン化し解析したところ、いずれも大腸菌タイプの遺伝子構成をしていることが判明した。smfー3は大腸菌にクロ-ン化して初めて発現するが、US5株では形態形成レベルでの問題ではなくはなく、遺伝子の発現そのものが起こっていないことがimmunoblotで確かめられた。SMFー3のサブユニットには、普通の線毛サブユニットに見られるシステインがなく、SーS結合のない立体構造を持っているだろうと推測された。SMFー3線毛抗体を用いて172株のセラチア臨床分離株を検索しても、1株も凝集する株はなかったが、smfー3を含む4つのSalI断片をプロ-ブとしてコロニ-ハイブリダイゼ-ションを行なったところ、約50%のセラチアがsmfー3をcrypticな状態で保持していると思われた。このことはUS5株以外のハイブリダイゼ-ション陽性株からsmfー3を大腸菌にクロ-ン化できたことからもその可能性が強められた。今後さらに線毛と病原性との関連性、線毛発現を調節する条件の検索、機能等について解析を進めていく予定である。また、それぞれの主要線毛サブユニット遺伝子についてはDNA塩基配列の分析を進めてきたが、さらに共通抗原を持ちながら分子量、形態の異なる他の2種のセラチアMS線毛遺伝子(smfー4、smfー5)についてもDNA塩基配列を決定し、線毛の形態形成や抗原性を担うアミノ酸部位を比較検討していく予定である。
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