研究概要 |
紡錘型(L型)と多角型ないし円型(R型)のXC細胞につき実験を進めた。細胞レベルで,R型はコレラトキシン及びフォルスコリンに反応して著しく細胞内cAMPを上昇させるが,L型はいずれにもほとんど反応しない。細胞膜分画で調べると,R型はGTPγS,NaF,フォルスコリンに感受性で,L型はこれらに抵抗性である。ところがMn^<++>に対しては,R型,L型いずれも同じように高いレベルのcAMPを産生する。この結果からL型のアデニレ-トシクラ-ゼ触媒部(C)の酵素活性は,R型と同じ程度であるものの,L型のCはGTP結合蛋白を介した刺激に大して著しく反応性が悪いことがわかった。刺激性GTP結合蛋白(Gs)のαサブユニット(αs)及び抑制性GTP結合蛋白(Gi)のαサブユニット(αi)の発現量はmRNA及び蛋白レベルで,L型とR型の間に差がない。又Gs,Giに共通と考えられているβサブユニットの発現量にも差がない。次いでαsの機能を比較するために,L型,R型各々の膜分画からGTP結合蛋白を粗抽出し,αsサブユニットを遺伝的に欠損するマウスS49細胞膜への再構成実験を行った。その結果,L型でもR型でも同様にS49細膜のアデニレ-トシクラ-ゼ活性を再構成した。即ち,L型とR型ではGTP結合蛋白の発現に質的量的な差がない。以上からL型においては,正常なαsサブユニットと正常なCとの相互作用に障害があるためアデニレ-トシクラ-ゼ活性が低いものと考えられた。又コルヒチンでL型の細胞を処理すると,コレラトキシンに対するcAMP産生を上昇させることができる。このことはL型のアデニレ-トシクラ-ゼ活性を低下させている原因として細胞骨格が何らかの関与をしていることを示唆している。L型とR型では細胞骨格蛋白の発現パタ-ンに差があるが,XC細胞の形態を決定している因子が,アデニレ-トシクラ-ゼ活性を制御している可能性がある。
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