研究概要 |
紡錘型(L型)と多角形ないし円型(R型)のXC細胞につき、さらに実験を進めた。染色体上にクラスタ-として存在するホメオボックス遺伝子をプロ-ブとして,L型をR型の間でDNAメチル化の相違を調べると,明らかに異なっている。即ち、L型とR型の細胞のDNAのメチル化の差異は、ラウス肉腫ウィルス(RSV)のプロウィルスにとどまらず,より広範囲なものであることがわかった。これまでにL型とR型の細胞の構成蛋白にいくつかの差があることを認めているが,上記の結果は、L型とR型でRSVプロウィルス以外の部位においても転写状態が異なっていることをさらに指示する。L型とR型で発現量の異なるものの一つにNADーグリコハイドロレ-スがあるかもしれない。平成元年までの研究で,刺激性GTP結合蛋白及び抑制性GTP結合蛋白のαサブユニット(各々αsとαi)の発現量がmRNAレベル、蛋白レベルで,L型R型においてほとんど等しいにもかかわらず、コレラトキシン及び百日咳毒素によりリボシル化されるαs,αiはL型で著しく多く、矛盾したデ-タであったが、より詳細に検討したところ,蛋白量の少い所では,L型とR型でリボシル化されるαs,αiの量に差はなく,蛋白量の高い所でR型のαs,αiのリボシル化が抑えられることがわかった。即ち、R型の細胞でNADーグリコハイドロレ-スの発現が高い可能性がありこれらの細胞が、そのクロ-ニングに役立つかもしれない。アデニリルシクラ-ゼの触媒部位のcDNAを入手し,ノ-ザンブロットの手法でL型、R型における発現を調べたが、2μgのポリARNAを流しても検出できない。しかし、同様のプロ-ブで、L型,R型のcDNAライブラリ-をスクリ-ニングすると、明らかに相同性のあるcDNAが存在する。今後、これらのアデニリルシクラ-ゼ遺伝子について詳細な検討を加える必要がある。
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