研究概要 |
1.単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)深山株に属する5種類の細胞変性効果(CPE)変異株は、近縁した遺伝的背景とマウスに対する相互に異なる神経毒性を有する。これらのCPE変異株のゲノムDNAを、制限酵素、BamHIによる切断、およびアガロ-スゲル電気泳動ののち、EtBr染色法とサザンハイブリダイゼ-ション法によって検出し、比較検討した。その結果、CPE変異株間で、多数の制限酵素切断断片(BamHI-B,D,E,K,N,R,S,X,Y)に相違を見出したが、これらの相違は、各CPE変異株の神経毒性の強弱とは無関係であると推定された。2.深山・αV、βV両株は、深山CPE変異株の一つである-GCr株に由来するin vitro長期持続感染株である。両持続感染株のゲノムDNAについて、上記と同様の制限酵素切断分析を行い、深山・-GCr株を含むCPE変異株のゲノムDNAの分析結果と比較検討した。その結果、CPE変異株のBamHI-Z断片は、1.84〜1.99kilobase pairs(kbp)であったのに対し、両持続感染株のBamHI-Z断片は、1.78kbpに短縮されていた。3.HSV-1の神経毒性の差異に関係する因子を見出す目的で、巨大DNA分子の分析に適したフィ-ルドインバ-ジョンゲル電気泳動法によって、強毒F株と弱毒深山・-GCr株の各ウイルス粒子DNAを分析した。その結果、弱毒株のウイルス粒子DNAにのみ、ウイルスゲノムDNAよりも泳動距離の僅かに長いDNAが含まれていた。4.マウスを用いたHSV-1鼻腔内接種実験により、その潜伏感染について、以下の事実が明らかとなった。弱毒株、およびn-butyrateの利用は潜伏感染の研究に有用であった。2種類のHSV-1株を高率に同一の神経節に潜伏させることが可能であった。潜伏の感染能の低いHSV-1株は、潜伏感染能の高いHSV-1株と比べて、急性感染期の三叉神経節におけるウイルス感染価、およびヒトneuroblastoma cellに対する感染能が著しく低下していた。
|