1.ヒトパルボウイルスに対するモノクロ-ナル抗体の中和活性 前年度に作成されたウイルス構造蛋白VP2に対するモノクロ-ナル抗体BE11は、in vitroのヒト骨髄細胞培養におけるウイルスのCFUーeの傷害作用を完全に中和し、そのエピト-プがウイルスの細胞への吸着において重要な領域であることを示していた。この領域を同定する為に、ウイルスVP2分子上の種々の領域の合成ペプチドを作成し、BE11との反応性を検討した。その結果BE11はVP2のアミノ末端から328〜344番目の領域のペプチドに反応していることが判明し、この部位がウイルスの表面に存在し、ウイルスレセプタ-との結合に密接に関与していることが示唆された。 2.ヒトパルボウイルスの動物細胞での発現 ウイルスの主要な構成蛋白であるVP2を完全に含むウイルスゲノムをSV40の後期プロモ-タ-の下流にクロ-ニングし、CDS細胞へトランスフェクトすることにより、VP2の発現を観察した。VP2はウイルスがヒト骨髄細胞へ感染した時と同様に細胞核への移行蓄積がみられ、VP2分子上に核移行シグナルが存在することが強く示唆された。 3.ヒトパルボウイルスの大腸菌での発現 ウイルスのVP2を完全に含むウイルスゲノムを大腸菌の外膜蛋白OmpAのシグナルペプチドの下流にクロ-ニングし、発現蛋白の大腸菌ペリプラズムへの蓄積が観察され、上記モノクロ-ナル抗体を用いたアフィニティ-クロマトグラフィ-にて現在精製中であり、血清診断及びワクチンへの応用を考慮している。
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