1.前年度に作成したデングウイルスコア遺伝子を組み込んだ組換えバキュロウイルス(373-core)をSf-9細胞に感染させ、24〜48時間培養後固定し、デング熱患者の回復期血清を用いペルオキシダ-ゼ抗ペルオキシダ-ゼ(PAP)法で染色した。その結果、患者血清と373-core発現蛋白質との反応は認められなかった。このことは、(1)373-core発現蛋白質にはデングウイルスコア抗原の一部のみ発現されており、患者血清中のコア抗体のうち、発現蛋白の抗原の対応するコア抗体が無いか或は非常に少ない。(2)デングコア蛋白質は感染細胞の表面或は細胞外への移動が無いため、免疫系細胞による認識がされにくく、従ってコア抗体の産生が悪いこと等が考えられる。 2.前年度とほぼ同じ方法で、デング4型ウイルスのE蛋白質遺伝子を組み込んだ組換えバキュロウイルス(401E)を作成した。この401E感染細胞内には非感染細胞中には見られない分子量約43kの蛋白が発現していた。この401E感染細胞を前期と同様の方法で固定しPAP染色を行ったところ、デングウイルス免疫血清、E蛋白に対する単クロ-ン抗体およびデング熱患者回復期血清等との反応が認められた。また、日本脳炎ウイルスに対する抗体とも僅かに反応が認められた。この401E感染細胞を抗原とし、デング熱患者の血清中の抗体価をPAP法による染色価で調べると、日本脳炎ウイルスワクチンを抗原としたELISA抗体価と非常に良く相関した。このことは401E発現他蛋白が診断用抗原として使用できる可能性を示唆している。今後、この発現蛋白の分離・精製と、診断用抗原としての有用性について検討する。
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