サイトメガロウイルス(HCMV)の主要構成蛋白65kDaの抗原性、化学的性状、感染防御への役割を研究し、得られた結果の概要を報告する。 1.65kDa蛋白上に存在する抗原決定基について:65kDa蛋白に対する数種のモノクロナ-ル抗体(MAb)及び単離された65kDa蛋白を用いてモルモットを免疫し特異抗体を作製した。これらの抗体はWestern blotを行うとすべて65kDa蛋白を特異的に認識している。これらの抗血清を用いて感染細胞を蛍光抗体法で染色すると、それぞれパタ-ンを異にしており65kDa蛋白に数種の抗原決定基の存在が示唆された。(Arch.Virol.101、1988) 2.65kDa蛋白にはIgG Fc断片及びβ_2microglobulinに対するリセプタ-が存在する:先にわれわれは、HCMV感染細胞にイムノグロブリンFc断片に対するリセプタ-(FcR)が存在することを報告したが、今回の実験では、65kDa上にIgG Fc断片及びβ_2microglobulin(β_2m)に対するリセプタ-が存在することを、^<125>IでラベルしたFc、Fab、β_2mを用いて65kDaにFc断片に対するリセプタ-を証明した。(J.Gen.Virol.70、1989) 3.65kDa蛋白とHLAとの関係:65kDa蛋白をプロテア-ゼSVー8で切断し、Fc及びβ_2mと反応すると、FcRとβ_2mRとが共存することが判明した。又、感染細胞には人主要組織抗原(HLA-A、ーB、ーC)のRNAの増加を証明した。現在、組織抗原とHCMVの感染、免疫反応に対する役割を追求している。(Submitted to J.Gen.Virol.) 以上、65kDa蛋白には各種の抗原決定基が存在し、この蛋白が感染、免疫に大きな役割をしていることが示唆される。この蛋白の化学的組成を知るには、蛋白の精製からの方法には収量の上で困難があり、遺伝子レベルでの解析の方向へ進行中である。
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