NK細胞は、抗腫瘍活性作用の面から注目されてきたが、その後、再生中の正常細胞に対してもその障害活性を発揮できることから、生体調節系としての機能が考えられてきていた。このような時、本研究を課題とした訳である。特にこの時期に筆者らは、肝固有のNK細胞を同定していたので、その性状や生理的的役割を解明してゆくことを目的とした。この二年間に明らかにできたことを挙げると、次のように要約できる。 1)マウスの肝にはリンパ球が存在し、その約25%がNK細胞である。この数値は、他のどの臓器よりも多い。 2)肝NK細胞は特徴的な年令変化を示し増減する。体重や肝の重量増加が止まる6週齢でピ-クを向え、のち減少する。 3)肝NK細胞は、休止状態の肝細胞には障害活性を示さないが、再生肝細胞にはその活性を発揮する。 以上の1)〜3)の実験結果は、肝NK細胞は生理的あるいは緊急時の肝細胞再生の調節系として働いている可能性を強く示唆した。 4)NKの標的細胞がクラスIMHC抗原が低下した時に、NK感受性が上昇することが知られてきた。筆者らは、酸処理で生細胞からクラスIMHC抗原を解離方法を新たに開発しこの現象を再現し、また、そのメカニズムの一部を解明した。 6)肝再生中の肝細胞あるいは、EGF添加によってin vitroで増殖中の肝細胞は、あきらかにクラスIMHC抗原が低下し、そのNK感受性とよく相関することを明らかにした。 7)肝NK細胞の研究から発展し、肝のリンパ球中にγδT細胞が存在することを、初めて明らかにした。
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