我々はPre-B細胞に特異的に発現している2種類のマウス遺伝子(VpreB、λ5)をゲノムDNAよりクローニングした。VpreB、λ5はそれぞれ免疫グロブリンV_λ、C_λとよく似た構造、塩基配列を有しており、免疫グロブリン遺伝子ファミリーであるが再構成はされない。この両遺伝子共に、マウスPro-B、Pre-B細胞特異的にmRNAが検出され、B細胞、形質細胞では全く見出されない。すなわち、VpreB、λ5はPre-B細胞で特異的に発現し、B細胞になるとその遺伝子発現がおさえられている事が明らかになった。このようなVpreB遺伝子の細胞特異的発現をコントロールしているcis-elements(プロモーター、エンハンサー)を同定するために、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子に、VpreB遺伝子の5′上流、3′下流DNAを結合して、種々の細胞へ導入してその遺伝子発現(CAT assay)を調べた。その結果、VpreB遺伝子5′上流にプロモーター、VpreBとλ5遺伝子の間のイントロンにエンハンサー領域が存在することが明らかになり、これら二つのエレメントにより、VpreB、λ5遺伝子のpre-B細胞特異的発現がコントロールされていることがわかった。今後は、これらcis-elementsに結合する核蛋白の同定と精製を行なうとともに、それら核蛋白をコードする遺伝子のクローニングを試みる。VpreBのプロモーター、エンハンサーをc-myc、c-ablなどのoncogeneに結合させたキメラ遺伝子を用いてトランスジェニックマウスを作製し、腫瘍の発生を検討する。
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