自己免疫病に認められる自己抗体の産生はB細胞の異常な活性化に基づく結果であるが、このB細胞の異常は最終的な抗体産生レベル(6カ月令)でしか検出できず、この点がモデル動物を用いた自己免疫研究における一つの障害となっていた。しかし、最近我々はMRL/lprマウスの増殖T細胞で免疫して得たモノクロ-ナル抗体の中から活性化B細胞を検出し得る抗体を発見した。本研究では、Lpー3で検出される抗原(Lpー3)の機能解析、マ-カ-としての応用性の検討、構造解析を行ない以下の結果を得た。 1.Lpー3は、顆粒球やT細胞では構成的に表現されている。2.B細胞では、休止期には表現されず、抗原刺激やMitogenによる活性化に伴って、(GO期からGIA期への移行)、B細胞にも表現される。また腫瘍B細胞もLpー3陽性である。これらの事実は、Lpー3抗原がB細胞を始めとする一群の細胞の増殖分化に関係した細胞表面抗原である可能性を示唆する。3.(NZB×NZW)F1マウスでは自己抗体産生の認められない若年期にすでにLpー3陽性細胞が異常に増加しており、この細胞亜集団はILー5、ILー6に反応し自己抗体を産生した。この事実は、Lpー3が増殖分化因子のリセプタ-あるいはリセプタ-親和性増殖因子である可能性を示唆する。4.Lpー3は分子量132Kdの単量分子である。5.2、3を裏付けるため、Lpー3遺伝子のクロ-ニングを目的にまず、Lpー3の精製を行った。そのペプチド断片のシ-クエンスの一つに免疫グロブリンス-パ-ジ-ンファミリ-との相同性を認め、3との関連で興味深い。6.現在、Lpー3遺伝子と思われるクロ-ンを得ており、将来的にはヒトhomologueを精製し、それに対するヘテロ血清抗体を得たいと考えている。
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